不幸の手紙
季節は秋になり、過ごしやすい季節になっていた。訓練は一通り終わり、里さんからは、ビーグルの中でもトップクラスだよ。と太鼓判を押されていた。私は最初思い描いていた以上にJOSHAが成長したため、満足感でいっぱいた゛った。
その頃の私は仕事が忙しく、昼から出かけて、帰って来るのが夜の11時を過ぎていた。旦那の方は単身赴任で家にはいない。朝一番にJOSHAの散歩に行き、訓練をした後、JOSHAは留守番だ。夜、私が帰ってきても何ら変わった様子もなくおりこうにお留守番をしていた。
その頃私たちはマンションを購入する計画をしていた。最初に見に行ったところが一発で気に入り、そこに決めていた。1階だけれども15坪の庭つき。ここでバーベキューもできるし、JOSHAもこの広い庭でかえる。
ペットの方は、というと規約には居住の中で飼える小動物と書いてある。
管理会社の方に尋ねると、JOSHAを見にこられ、きちんとしつけられているから大丈夫と、OKが出た。あのマンションでアメリカ的な生活ができる、私たちはわくわくしていた。
そんなある日の事。ポストの中を確認すると、一枚の葉書が入っていた。
全文カタカナ。
「アナタノウチノイヌガドンナニウルサイカシッテイマスカ。ヨルデカケルノナライヌモイッショニツレテイケ。」
といった内容が書かれていた。私は身震いがした。涙があふれてとまらなかった。
おりこうにお留守番をしていると思っていたJOSHAがうるさい?自慢のJOSHAが近所の迷惑犬?全文かたかな。とても気持ちが悪いし、しかも私の行動を知っている。恐怖とショックでその夜は眠れなかった。
翌日、気を取り直し、菓子を持って近所を回る事にした。迷惑をかけていたのならまず謝らなければ、そしてどういう状況なのか近所の人が一番知っているはずだ。近所の人に話を聞くと、夕方日が落ち始めると同時に泣き始める。ずーと、何時間も泣いている事もある。泣いてない日もあるが、泣いてる日の方が多い。どうしたと?と声をかけると泣き止むが、しばらくたつとまた泣き始める。何度も私に相談しようと思っていたのだが、と言われた。近所5.6件回ったが同じ回答だった。
私は愕然とした。今までJOSHAの問題行動について知らなかったではすまされない。すぐに里さんを呼んだ。
事情を話しながら、涙は止まらなかった。里さんはこういう葉書はとにかく捨てた方がいい。と言った。
そしてとにかく問題を解決するように考えなければ。結局、留守番の時間が長い事。最初泣いたときに近所の人が出てきた事がJOSHAを甘やかす事になった。一日中、外においているから、外を気にして落ち着かず、さびしい気持ちと不安な気持ちで泣くのであろう。犬小屋はあるが、それまでの訓練の中で「ハウス」は教えてなかった。
外でもいいからある時間になったら、ハウスできるようにすれば問題は解決するはずだ。と言われた。そして近所の人にも協力してもらい、JOSHAが泣いたらかまわず、もしかまうとしても、NOと言って空缶をなげてもらう。
夕方1度家に戻り、自転車運動をして体力を消耗させた後、ゲージにハウスをさせる。ゲージも準備しなければならない。今までもいろんな問題を解決してきたから、きっとできる。と里さんは言った。しかし、私はせっぱ詰まっていた。葉書を気にしているのだ。また御近所に長い間、迷惑をかけてきたのがわかった以上、もう泣かすわけにはいかなかった。その気持ちを伝えると、里さんは「だったら訓練所に入れましょう。」と言った。JOSHAは松岡訓練所に入ることになった。
3日後、里さんと松岡訓練所に行った。あらかじめ里さんから事情は話してあった。
松岡先生はJOSHAの顔を見るなり、
「ビーグルはとにかく問題児が多いもんね。わー、根性すわった顔してますね。」といわれた。
数ヶ月前も家族全員をかみつき、どうしようもなく涙ながらに問題を解決してください、と1匹のビーグルを預かっていたらしい。
解決法としてはやはり里さんと同じでゲージを使い、ハウスができるようにする事から始めるという。期間は何でもそうだが、1つの事を教えるのには時間がかかる、2ヶ月間預かるという話だった。担当者がつくのだが、決まってから電話します、との事だった。
帰り道、今度は寂しくなって涙がでてきた。里さんと、元気がでるように、JOSHAが早く学校になじむように、ととんかつを食べた。里さんは「ジョシュ君だったらすぐに学校になじむはずだけど、もしかしたら少しやせて帰ってくるかもしれない。でも彼のためには必ずいい人生経験になるだろう。担当の人が決まったら連絡を密に取る事だ」と言ってくれた。